50年間の阪神間・北摂をタイムトリップ
~地域の輝きを、これからも

セレクトショップ 「hananoki」

ファッションで個性をはぐくむ「服育」を

1974年に神戸で輸入子供服店を開業し、もうすぐ50年を迎える。おしゃれだった母親の影響で、学生時代からファッションが大好き。だが、子育て中、気に入った子供服を売る店がなく、「それなら自分で店を開こう!」と一念発起。米国やヨーロッパを飛び回って、デザインと品質のいい商品を買い付けた。ほかにない品ぞろえと木村さんの丁寧な接客が人気を呼び、順調に店舗を増やしたが、95年の阪神・淡路大震災の影響で経営危機に。一番小さな1軒だけを再建し、今は、大人女性のための服も扱う。

「『服育』って大切。高価じゃなくても、自分に似合う洋服を着こなして、個性をはぐくんでほしい」という思いで、85歳の今も毎日店頭に立つ。「ママだったお客様がおばあちゃまに、娘さんがママになり、世代を超えて通ってくださるのは本当にうれしい」

80歳を過ぎてSNSを始めた。自らのファッションを発信すると、洗練されたスタイリングが注目を集め、一躍神戸のおしゃれマダムとして有名に。現在フォロワーは10万人、著書も3冊出版され、店には全国からファンが訪れる。「年齢を重ねた人にこそ、もっとおしゃれを楽しんでほしいから」90歳まで店を続けるのが夢だ。

オーナー 木村眞由美さん

 

兵庫県神戸市中央区三宮町2丁目8-8
℡078・331・8769

https://kobe-hananoki.business.site/
営業時間/11:00~18:30 定休日/なし


洋菓子店「ミッシェルバッハ」

「自分の好きなお菓子」
選ぶ楽しさをこれからも

西宮市・夙川の住宅街に店を構える洋菓子店「ミッシェルバッハ」。1982年から同じ場所で愛され続けている。3日かけて作る花の形のクッキー「クッキーローゼ」は、毎日焼き上げるがすぐに売り切れ、なかなか買えない幻のクッキーとして全国でも有名だ。

オーナーの須波宏晋さん(後列左から2人目)は、従業員らと笑顔で撮影に応えてくれた

オーナーの須波宏晋(ひろのぶ)さんは2代目。先代の菓子の味を守りつつ、パリでの修業経験を生かした新しい試みにも挑んでいる。「本場パリを意識しながら作る自信作」と話すマカロンショコラは、甘さ控えめのメレンゲが肝で、アーモンドとガナッシュの風味が絶妙。創業時からシュー皮の配合は変えていないというエクレアも、見た目や味のレパートリーで新しさを出す。一方で、創業時から店に出し続けているバタークリームのケーキ「フランク」や、チーズケーキも根強い人気だ。

「ここは“自分の店”ではなく“地域のみなさんの店”」と話す須波さん。「これからも色んな世代の人が自分の好きなお菓子を選ぶ楽しみがある店でありたいですね」

「フランク」は見た目やレシピの基礎は変えないが、去年よりもおいしくと改良を重ね続けている

西宮市久出ヶ谷町2-28 TEL0798・74・3789
10:00~17:00 月火不定休
※休日はインスタグラムで告知


EXPO’70パビリオン

未来につながる万博の世界を、
映像や音でも体感できる資料館

万博記念公園内にある「EXPO’70パビリオン」は、1970年の日本万国博覧会(大阪万博)の開催時に使用・展示された様々な備品やプロダクト、資料や入場者データなどを保存すると同時に、多くの人にみてほしいと「鉄鋼館」を利用して、2010年に開館。館内では随所で記録映像が流され、当時の興奮も伝わってくる。

「スペースシアターホール」 建物と同じく、前川國男が設計とプロデュースを手がけた実験的なホール

必見は「スペースシアターホール」。開催当時、コンサートが催された音楽ホールで、世界初の立体音楽堂がそのまま残されている。14年には、当時をイメージしてサイケデリックな光の演出が復活! ホールの横のスペースで、スピーカーから流れる音楽と共に独創的な世界観を楽しめる。

パビリオンを華やかに彩ったホステスのユニホームは「今着たいぐらいカッコいい」という声が ※写真提供/大阪府(3点とも)

また、1970年大阪万博を知る世代だけでなく、20代の若い人たちにも人気なのが、ワイヤレステレホン、電気自転車、缶コーヒーなど大阪万博をきっかけに普及した製品の展示。「えっ、これも」という驚きの声が聞こえてくるそう。
「未来につながる展示が万博。25年には大阪・関西万博が開催されますが、その前に足を運んでいただければ、もっともっと次の万博が楽しみになるはずです」と同館職員。

EXPO’70 パビリオン
https://www.expo70-park.jp/
高校生以上210円、中学生以下無料
(別途、万博記念公園入場料〈大人260円、小中学
生80円〉が必要)、10:00~17:00(入館は16:30
まで。水曜休み、公園休みに準ずる)
※別館も8月オープン予定、料金変更の可能性あり


【表紙イラスト制作者インタビュー】 都 あきこ さん

「70年代の阪神北摂地域をカラフルに表現」

1970年、大阪万博開催の年に高槻市で生まれた都さん。その後全国を転々としたが、15年前に念願の神戸に移住。自身の大好きな神戸の街を背景に、思わず「こんな人いるいる!」と言いたくなる人々をキャラクター化した「コベピポ®」はメトロこうべ地下鉄通路の壁画になるなど、今や神戸のご当地キャラクターとして人気を博している。

今回の朝日ファミリー50周年記念イラスト制作については「70年代のポップカルチャーが大好きで、自分の画風の原点にもなっているので描いていてとても楽しかった」と話す。「自分自身の幼い頃の思い出が詰まったスポットばかりなので懐かしく、当時を振り返りながら瓶コーラやカップ麺、カラフルなファッションなど細かい部分にもこだわったので楽しんで見て頂けるとうれしいです」

都あきこ/神戸市在住エッセイ漫画家・イラストレーター。MACB(マックビィ)株式会社 代表取締役。甲南女子大学文学部メディア表現学科非常勤講師。
コミックエッセイ、イラスト、キャラクター制作、デジタル絵本、デザイン、取材ルポなどジャンルを超えて活動中。「今日から、菌トレ!」(小学館)など出版物多数。
9月13日(水)~18日(月・祝)に開かれる大丸神戸店の神戸市(こうべいち)に出店予定

コベピポHP https://kobepipo.com/


西洋料理とワインの店「土筆苑」

創業50年 西宮北口の変遷
見続けてきた洋食屋さん

西宮北口エリアの変遷を50年見続けてきた洋食店がある。玉置洋子さん(80)が駅から徒歩2分の地に「土筆苑(つくしえん)」を開いたのは1973年8月。ソファ約60席とシャンデリア、グランドピアノがあり、昼はレストラン、夜は生演奏と料理、お酒を楽しむ高級ラウンジ。毎晩待ち客が出るほど満員で、常連客にはプロ野球選手もおり、記者会見の会場になったことも。

重厚な木やレンガを使った内装は当時のまま。客席は34席

2002年に阪急ブレーブスがなくなり、西宮球場跡地一帯は再開発、兵庫県立芸術文化センターや西宮ガーデンズができた。「もうラウンジの時代じゃない」と思っていた時に、上野精養軒などで修業を積んだ大谷隆史さんと出会う。「命を懸けるつもりで一緒にやってほしい」と口説いた。人気メニューはタンシチューやハンバーグ、グラタンなど。真空パックにしてから温めて配膳する方法を考え、通販も始めたところ、注文が殺到した。

「彼は頼もしい後継ぎ」と話す玉置洋子さん(左)とシェフの大谷隆史さん

ラウンジ時代から毎晩テーブルを回る。「毎日お店に来て、お客様と話したいんです」と洋子さん。「親に連れられて来た子どもたちが将来わが子を連れて来てくれるよう、長く店を続けたい」と大谷さん。洋子さんから大谷さんのリレーで温かいふれあいは続く。

兵庫県西宮市高松町11-2-102
TEL:0798・65・3366 https://tsukushien.com/
営業時間/ランチ(平日)11:00〜14:30(土日祝)11:00〜15:00
ディナー17:00~22:00 ※イベント等で時間が変更になることあり
定休日/月曜日(祝日の場合翌火曜)


西宮市大谷記念美術館

美術を未来につなげていく場

風光明媚(めいび)な阪神間は戦前から芸術家たちが好んでアトリエを持ち、生活の拠点としてきた。「西宮に美術館を!」という市内在住の芸術家たちの願いを知った実業家・大谷竹次郎は、邸宅と土地、近代絵画を中心とした収集美術品などを市に寄贈。市は財団を設立し、1972年11月に西宮市大谷記念美術館が誕生した。

ゴールデン・コスモス(ドイツ)《ルートヴィッヒとサイ》

当初は和風住宅のたたずまいのまま。玄関で靴を脱ぎ、畳敷きの部屋で美術品を鑑賞するスタイルだった。91年に和風建築の趣を残して大規模増改築。阪神・淡路大震災を乗り越えて水と緑の美しい庭園を持つ美術館として親しまれている。

50年の間に寄贈や購入で作品は増え、今年3月末で約1300点に。地元作家の作品が中心で、藤江久志副館長は「特色ある独自の企画展示を行う原動力となっている」と胸を張る。

78年からは毎年恒例で「イタリア・ボローニャ国際絵本原画展」を開催。子どもの本の国際見本市で開催される公募展の入選作を展示するもので、毎年、日本からも数多くのイラストレーターが参加し、入選してきた。

昨年の開館50周年では特別記念展「BACK TO 1972-50年前の現代美術へ-」を開催。 時代に焦点を当てた展示が話題に

今年の会期は8月19日(土)から10月9日(月・祝)まで。「3世代で楽しめる珍しい展覧会で、これが美術館デビューというお子さんも。美術館を身近に感じていただけます」と作花麻帆学芸員。

西宮市中浜町4-38 TEL:0798・33・0164
http://otanimuseum.jp
10:00~17:00開館(入館は16:30まで)、水曜定休


千里ニュータウン

憧れの「団地ライフ」再び
成熟の街と暮らし 再生進む

日本初の大規模住宅団地が開発された千里ニュータウン。1970年代にかけて先進のライフスタイルが注目を集めた。少子高齢化で人口が減った時期もあった中で、若年層の流入に一役買ってきたのが、UR都市機構と無印良品の住空間事業部門を担う㈱MUJI HOUSE(東京都)が12年から始めた団地リノベーションプロジェクトだ。

豊かな緑が人気のUR賃貸住宅

「こわしすぎず、つくりすぎない」をコンセプトに住む人の自由度を高くし、例えば、団地が生み出したダイニングキッチンの様式は受け継ぎつつ、統一したデザインでキッチンとテーブルが自由に配置できる「組合せキッチン」など、様々な工夫が盛り込まれている。

千里ニュータウンで過去公開していたリノベーション住戸のモデルルーム

現在、千里ニュータウンの団地で同住戸の募集はないが、これまでに189戸を供給。「緑とコミュニティーが成熟した千里は都心にも近く、多様な期待に応えるところとして、今後も魅力が高まっていくのでは」とUR担当者は話す。

 


ベルサイユのばらカレー(ジュエリーカミネ)

半世紀を超えて”ベルばらカレー“
宝塚をさらに元気に

1972年から連載が開始、74年に宝塚歌劇団で初演され、社会現象を巻き起こした池田理代子原作の「ベルサイユのばら」。

多くの人の心に残る不朽の名作は、約50年の時を経て、レトルトカレーや紅茶などの食品のパッケージにも登場し、宝塚市の街おこしに一役買っている。手掛けているのは老舗宝飾店のジュエリーカミネ(神戸市)。本業以外に、「ベルサイユのばら」と手塚治虫原作の「鉄腕アトム」などをデザインした食品の企画・販売に関するライセンスを持っている。

「ベルサイユのばら」の食品が生まれたのは6年前。すでに大阪市立大学と共同開発で手塚治虫の地サイダーを生み出していた同社に、「新しくできる新名神高速道路の宝塚北サービスエリアの目玉になる土産品が欲しい」と宝塚市から声がかかり、ラインアップに加えた。オスカルとアントワネットのイラストは売り場でもひと際目を引き、遠く関東から買い求めに来る人もいる。

ジュエリーカミネ元町本店のスタッフの皆さん

カレーは作者の池田理代子さんが監修。淡路島産のタマネギをはじめ、野菜はすべて国産にこだわり、化学調味料や保存料は使っていないという。フランス革命を舞台にした「ベルばら」らしく、味は少しピリっと辛口だ。ライセンス事業部の橋本若菜さんは「地元の方に長く愛されてきた宝石店なので、いろいろな形で兵庫県を盛り上げていきたいですね」と話す。

ベルサイユのばらカレー(160グラム)各734円、ベルサイユのばら紅茶842円~。
問い合わせ ジュエリーカミネTEL078・332・5575(平日10:00~19:00)

©︎池田理代子プロダクション




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カテゴリ: 50周年